対談/vol.7

しょくスポ対談

vol.7 三矢 八千代 さん

今回のゲストは、(社)日本エアロビック連盟理事であり、日本エアロビック界の先駆者である三矢八千代先生です。三矢先生は、私こばたと共に食と運動の大切さ・楽しさを体感できる『食育ビクス』を開発して下さったり、また、11月に開催しました食育アドベンチャー®指導者セミナーでも講師を務めてくださいました。そんな三矢先生に、エアロビクスに対する想いや夢を熱く語っていただきました!ぜひご覧ください。

三矢 八千代(みつや やちよ)


社団法人日本エアロビック連盟(JAF)理事/JAF認定 競技審判員/清水ナショナルトレーニングセンター・J-STEPアドバイザー/明治スポーツプラザ・ザバススポーツクラブ・アドバイザー/ 日本体育大学非常勤講師/日本女子大学非常勤講師
東京都生まれ。日本体育大学大学院卒業。83年日本初のエアロビクスインストラクターとして、東京・中目黒に「エアロビクス八千代スタジオ」を設立。エアロビクス界の先駆者として、スポーツ界やメディアなどから注目される。85年よりエアロビクスインストラクターを養成するプロ養成コースを日本で初めて開設、数多くのインストラクターがここから巣立っている。90年、世界各国で発売されベストセラーを記録するアメリカでNo.1のフィットネスビデオ『キャシー・スミスのもっとやせるフィットネス』に東洋人として初めて出演。脂肪燃焼効果の高いファットバーニング・プログラムを日本に広めると共に、プロサッカー選手のためのサッカービクス、高齢者のためのホームフィットネス、ボディチューンなど多数発表し、インストラクターのためのワークショップを各地で開催。フィットネス業界発展のため力を尽くしている。

◇八千代スタジオHP

※プロフィールは対談公開時(200712月18日)の
  ものとなります。

一人でも多くの方にエアロビクスを

-三矢先生のお仕事内容は、具体的にはどのようなものですか?
エアロビクスというフィットネスが中心で、スタジオの経営やスタジオプロデュース、インストラクターを養成するスクール運営、また養成したインストラクター達を派遣する仕事です。あと、大学でも授業を持っています。
-様々な活動を行ってらっしゃいますね。その中で一番好きなものは何ですか?
やはりインストラクターとして現場でエアロビクスを指導することですね。
-確か、三矢先生の運動プログラムをまとめたDVDを現在販売していますよね?
はい。一人でも多くの方に健康になって頂きたくて、簡単にできる運動をDVDにしました。一人でも多くの方々にエアロビクスを体験して頂くには、私一人では限りがありますので、DVDという形にしました。 
-とっても良いと思います!
ですが、DVDも良いと思いますが、テレビ番組もやりたいですね。実は今、静岡のケーブルテレビ『ドリームウェーブ静岡』で「三矢八千代のホームフィットネス」という番組をやっています。ですからその入り口には立てたかなと思っています。
今から10年ほど前にも、NHKで「三矢八千代のいきいきエアロビクス」という番組を担当していたことがあります。今現だったらもっと楽しかったと思います。
-でも日本のテレビ番組はフィットネス番組が少ないですよね。
そうですね。今の日本人にはフィットネス番組は楽しいと思います。東京とか大都市に比べ、地方はスポーツクラブが少ないですし。早くテレビ番組になると良いですね。

違う形で表現されたエアロビクス


エアロビクスは『敷居が高いもの』というイメージが多くの方の中にあるようです
-そうかもしれません。
エアロビクスをやったことがない方には大体、「私には無理」と言われてしまいます。でもそれは先行く私達インストラクターがそういう状況にしてしまったと思います。なのでどこかで方向修正しなければいけないと思っています。
-“方向修正”とは?
私達インストラクターの仕事はプログラムを処方することです。今のエアロビクスは出来る人にしか出来ない。やれる体力を持った人、やりこなす技量がある人にしか楽しめないものになっています。本当のエアロビクスは、底辺が広くて誰にでも出来るものなんです。
-内容が難しかったり、体力が高い人用のエアロビクスが主流になっているのですか?
エアロビクスのインストラクターは“運動処方士”なので、本来その人の体の具合や運動能力、体力、年齢を考慮して、「まずこんなことからやってみましょう」と提案し、どんどん運動を積み上げていくんです。そして生徒の中に「運動ができた」「私にもできる」という感覚が残り、しかも有酸素運動として効果がわかる。このような役割が果たせなければいけないと思います。ですがそれができるインストラクターが少ないのが現状です。
-そう言われるとそうかも。。。
インストラクターがしっかりと育たないまま、フィットネスクラブだけ膨れ上がってしまったのが現状です。
そこに流行りもののように人が集まってしまって・・・。
-そうなんですか・・・。
  あと今、フィットネスクラブって、好立地な場所に多くありますよね。
大都市ではそうなんです。今のフィットネスの第一条件は立地条件です。場所さえよければ人は集まる。ですから最近のフィットネスクラブは駅の中にもできています。指導者の力が問われる訳ではないようです。

ベテランの指導者が少ない時代


現在、インストラクターの数が足りない時代ですから、当然ベテランの指導者も減っています
-それは問題ですね。でもインストラクターの養成というのは、いろいろなところでされているのですよね?
大手のフィットネスクラブなどで養成しています。ですが、たくさんの問題があり、なかなかインストラクターが育ちません
-それはなぜですか?
養成する側の考え方に問題があると思います。一人の指導者を育てるのに必要な時間、内容、そして指導する先生の技量が大きく関わると思います。

フィットネス業界を良くするために

-三矢先生のところで行っている養成システムを、今後他のところで広く始めたりはしないのですか?
はい、あります。インストラクターを育てる際に最も重要な事は、その内容、つまりカリキュラムにあると思います。ですから、そのカリキュラムを中心としたメソッドを基礎に、関東エリアだけでなく全国に広げたいと思っています。インストラクターの養成・研修・管理までを行うメソッドを持っていますので、養成が必要なフィットネスクラブがあれば是非声を掛けて頂ければと思います。
-そのような形になってくと、業界全体の質も上がりますし、一般の方達のエアロビクスに対する誤解も解けるのではないですか?
そうですね。優秀な指導者を育てることは、日本のフィットネス発展の為に重要なことです。ところが、フィットネスクラブの増加に指導者の養成が間に合いません。それと同時に、養成する側にも問題があり、ベテランの先生の数も少なく、良い指導者を育てる環境がないという事も確かです。地方においては情報にも乏しく、レベルの格差も当然あります。業界全体を見ると、指導者の技術・質は、この20年間、残念ですがあまり伸びていないと思います。数年でベテランと言われてしまうのも、指導者として良いのでしょうか。

-確かにそうかもしれません。
エアロビクスのプログラムは、実に奥が深いですから。豊富な知識も必要です。一人前になるのに時間もかかります。健康づくりの為に指導しているはずが、知識不足でケガ人を作ってしまうこともあります

エアロビクスの魅力

-私自身、以前三矢先生のレッスンを受けた時、すごく楽しかったんです。三矢先生もエアロビクスの楽しさを体感して、だんだん魅力に引き込まれていったのですか?
私は、日本体育大学で器械体操部でした。その頃は、強くなる為には“根性・努力・忍耐”と言われていた時代です。当然、化粧やネイル、髪型など気にしては強くなれないと教わりました。ですが、大学卒業後に出会ったエアロビクスの先生は、美しく鍛えた体と笑顔、そして誰にも負けない体力。この先生に会った時は今までのトレーニングは一体何だったのだろうと、カルチャーショックになってしまいました。私はこの時、エアロビクスのインストラクターになりたいと思っていたわけではなかったのですが、すぐに決心しました。絶対この仕事に就きたい、この人の様になりたい、この気持ちから私のインストラクター人生が始まり、早や27年目になりました。今もなお、その情熱は少しも変わっていません。実に素晴らしい仕事だと思っています。エアロビクスの指導者としての楽しさと充実感を知れば、誰もがなりたくなると思います
-エアロビクスをやっている方って、みなさんお綺麗ですもの。
今後エアロビクスの業界が大きくなり、子ども達が「将来エアロビクスの先生になりたい」と言う時代になったら嬉しいですね。“真”のエアロビクスのインストラクターは、パーフェクトですから
-それはどういうことですか? 
先生と呼ばれるから知性を持たなければならないし、サービス業なので言葉や人とのコミュニケーションも巧みでなければならない。そしてスタイルは良い上に体力はある。これだけ持っていたら、どんな職業でも出来ます。パーフェクトでしょ?こんな素晴らしい職業を選ばなかったら損ですよ!
しかもおなかが大きくなったらマタニティービクスがあります。プールが好きならアクアビクス、子どもが好きならキッズビクスがあります。こんなに都合のいい職業です。女性には良い職業だと思いますよ
-なるほど。全てが揃っているのですね。

スタートラインに立ってから

-栄養士もそうなのですけど、資格はあくまでもスタートラインですよね。
そうですね。ですが皆さん資格を取るとこれでいいと思ってしまうようです。ところが資格はやっとスタートラインなのです。これからやろうとすることが少し見えてきただけです。ここからが本当の勉強、その一つ一つが知識となり、次の目標が見えてくるのです。ですからなかなかゴールが見えません。プロの道ですからね。
-確かにそうですね。
本当はゴールなどないのかも知れませんね。人を相手にする仕事ですから、いつまでもゴールは見えません
-なるほど。
だから、楽しい世界でもあり厳しくもある世界なのです。
-あと、エアロビクスのインストラクターは、指導の他にどの様な仕事がありますか?
エアロビクスのインストラクターも、キャリアを積むといろいろな分野の仕事が出来ます。例えばスタジオのプロデュースや、養成の仕事、健康に関する講演などいろいろです。
-自分で仕事のレベルを上げていくのは、ある意味とても大変ですよね。

▲八千代スタジオ
そうですね。例えばスポーツクラブをプロデュースするには、現場をよく知っていることが必要です。スタジオの司令塔になるわけですから、人からの信頼や、リーダーシップも必要です。私は、大手の明治製菓・ザバススポーツクラブを10年以上アドバイザーをさせて頂いていますが、スポーツクラブとしてどんなクラブを作りたいのか、人はどう教育していくのかなど、しっかりとした目標を持つことが重要です。やはり、長年現場を見てきた人間にしかできない仕事かもしれませんね。

『栄養・運動・休養』

-三矢先生はインストラクターを養成する際、カリキュラムの中で運動生理学や、栄養についても触れるとのことですが。
何はともあれ、運動がどうのとか言う前に、食がなければ何にも成立しないと思っています。まずは食ありき食がきっちりしていることで次の運動が功を奏する、そんな風に考えています。だから3原則で、食・運動・休息。食は徹底的に教育しないと大きく間違っていくことが多いですからね。私は食の専門家ではないから、それをつきつめていくと、食の専門家に意見を聞かないといけないレベルになってしまいますが、往々にして、フィットネス、スポーツクラブに来る「健康になりたい」という方達には、私たちの分かる範疇で「ちゃんと食べる」という原則だけは伝えていかないと、と思っています。例えば運動をしに来た人が「今日食事をしてこなかった」と言ったら、「今日は運動するレベルではないのでストレッチでもして帰りなさい」と言います。
-それが言える指導者の方ってすごく少ないと思います。
少ないですよね。
-よく私たちの間で話が出るんですが、スポーツ指導者の方は先ほどの3要素の順番としては、【運動、栄養、休養】の順番、栄養に関わる人は【栄養、運動、休養】の順番で言うといわれているんです。
私は絶対に【栄養、運動、休養】ですね。
-そう、だからそれがすごいなぁと。
インストラクターだって早くつぶれている人は絶対食が悪いんです。食が悪い人は大成しない。それは当たり前。だって私たち、スポーツ選手と同じでしょ。良い食事を摂ってない人はダメです、絶対。ケガする率も多いし、治りも遅い。肌の色ツヤも悪い。そういう意味でまず食ありきです。
あと、ダイエットについてなんですが、ある食の先生が言っていましたけど、ダイエットって言うのは食事を減らすことではなくて“上手に食べること”を言うんですって。その先生も食と運動があいまって健康をつくるから、両方なければ困るとおっしゃっていました。
そういう意味では、私がこばた先生に興味を持ったのは「食」だったからです。

運動は難しくない

-栄養士の人は、食事は力を入れますけど、運動はちょっと・・・といって、運動をされない方もいるんです。私はそこを改善したいと思っています。
私はつくづく思うのですが、人はいつ頃から運動嫌いになってしまうのでしょうか。大人になって運動好きな人は意外と少なく、苦手だという人がほとんどの様な気がします。そこで声を大にして言いたい。“運動は難しくない”と。
一生懸命頑張らなくても運動はできます。歩く速さをいつもより少し速足で。駅のエスカレーターは階段で。お風呂後にはストレッチ。もっと簡単に考えて欲しいですね。
-そうなんですよね。それだけでもいいんですよ。
そうは言うものの、私はエアロビクスの指導者ですから、もう少し楽しみながら運動をする方法を提案しなければいけませんね。そこで、最近DVDを発表しました。このDVDは高齢者が対象です。一人では外出できない方や運動とは無縁の方の為に作りました。このDVDで、運動の楽しさ、運動習慣が身につけば良いですね。このDVDは、これからのシルバー世代の方々のライフスタイルに大きな変化をもたらす材料になると思います。
 ◇高齢者に贈る三矢八千代のホームフィットネス
   お部屋でフィットネス/座ってフィットネス

-そうですね、ぜひ高齢者の方にやっていただいて、ずっと元気なおじいちゃん、おばあちゃんでいていただきたいですね。
 
三矢八千代の
ホームフィットネス

 
サッカー上達のための
フィジカルトレーニング
『サッカービクス』

良いものを伝えるために

-その他の夢はありますか?
良いものを伝えるために優秀なインストラクターをたくさん育てたいですね。また、スポーツクラブをもっと手軽に利用して頂けるようになり、運動する習慣を皆につけてほしいです。ですから本当は、幼稚園や小・中・高校でも体育の時間にエアロビクスダンスが導入されると良いですね。子どもの頃に基礎体力を作ることは大切なことです。音楽が流れたら楽しそうに体を動かすような子供を育てたいですね。そんな子たちが社会に出たら、フィットネスクラブも敷居が高くなくなると思います。
-小さい頃の運動嫌いもきっと減ると思います。そこに食育も入れていただいて・・・。
本当にそう思います。子供の頃から正しい食生活を身に付けていたら、偏食や間違ったダイエットはなくなると思います。難しい言葉ではなく、そこは食育の先生方に子供にもわかるよう工夫して頂くことが良いでしょう。  
-最近発表されたデータでは、小中学生の6割しか標準体重じゃないらしいんです。 4割はやせているか太っているか。これすごい問題ですよね!それを一緒に改めたいですね。
良いプログラムを一緒に考えましょう!

情熱と人づくり

-それでは、三矢先生にとって、仕事を極める上で大切なことは何ですか?
私の仕事を極めるということは、2つあります。私自身の指導者としての技量を伸ばすこと。そしてもう一つは、良い指導者を育てることです。つまり「人づくり」ですね。
-「人づくり」には大変な労力がいるのではないですか?
そうですね。人づくりは、とても大変ですよ。25年も指導者の養成に関わっていますが、なかなか思う様にいきません。人を育てるテクニックはあると思いますが、信頼関係、愛情みたいなものを育てることがまずは一番大変であり、重要なことです。この2つがあれば後は情熱ですから。
-そうですね。でも最近は情熱だけだとうまく回らない部分もあるのかな、と思う時があるんですが・・・。
こばた先生もだいぶ人づくりに苦労している様子ですね。
そう、だから自分の成長は人の中にありだと思います。人づくりは厳しいですよ。ごまかしたり人の輪を乱したりしたら叩かれる。ちょっとでも揺らいだことを言っても叩かれる。
-三矢先生に指導してもらった方は幸せですね。良い悪いをはっきり言える、自分の信念を持った考えの方が先生で。
私は育てた子達は自分の作品と思っています。これまで400人ほど教えてきたんですが、その完成形が見たいですね。でも正直言うと、一番の完成形は自分でなければいけないじゃないですか。そうすると一番興味があるのはやっぱり自分なんです。それも確か。だから自分のことを切磋琢磨するのにずっと夢中なんです。もっとうまくなるにはどうしたらいいんだろう、もっとこの人たちに受け入れられるにはどうしたらいいんだろう、とか。結局は自分磨きの何者でもない。一つの失言が大変なことになるんです。
―でもきっとこれまで、涙あり笑いありで人づくりや、自分を磨き上げてきたと思います。だからこそ今の三矢先生があるんですよね。
そうかもしれません。人に教わり叩かれ、反省の日々ですよ。自分を反省することも、この人づくりの中で教わりました
ともかく、人からたくさんのものを頂きました。その頂いたものを大切に、相手にも何かあげたい、そんな気持ちで今日まで来ました。イエス・ノーもはっきり言える信念も見つけることが出来ました。
-わたしはそのはっきりとした三矢先生がとても好きです。これからも三矢先生らしい道を進んでいってくださいね!
ありがとう!
-こちらこそ、本当にありがとうございました!

編集後記

いつも元気いっぱいの三矢先生。周囲にいる人にも元気を与えてくださります。
そして三矢先生の最も凄いところは、人に優しくご自分に厳しいところ。常に相手のことを考えながらの言動に、日々学ばせて頂いています。
フィットネス業界のトップランナーとして長年走り続けてらっしゃる三矢先生。常に世の中の半歩先を進んでらっしゃるように感じます。先駆者として大変な部分もおありだと思いますが、これからもより多くの方がカラダを動かすことの楽しさを知ることができるように、益々のご活躍を期待しております。
また一緒にお仕事できる日を楽しみにしています! 
こばたてるみ


指導者セミナー開催ご報告

三矢先生も講師としてご出演くださった食育指導者向けセミナー「食育アドベンチャー®指導者セミナー ベーシックコース」を、2007年11月17日(土)に開催致しました。三矢先生からは、「食育ビクス」指導や、指導者としての心構え、そして身体を動かす楽しさをどのように消費者に伝えるかをレクチャーして頂きました。会場も盛り上がり、とても素晴らしいセミナーとなりました!
セミナーご報告ページはこちらをご覧下さい↓
 食育アドベンチャー®指導者セミナーベーシックコース 2007年11月17日(土)開催
Copyright (c) 2003-2011, shoku sports Inc. All rights reserved.