対談/vol.5
しょくスポ対談vol.5 利根川 初美 さんvol.5のゲストは、しょくスポのキャラクターを手がけてくださった、グラフィックデザイナー・イラストレーターの利根川初美さんです。忙しいながらも、食のこと、家族のことをしっかりと考えている利根川さん。そんな利根川さんから生み出されるイラストは心が温かくなるものばかり!まさに利根川さんそのものです。またそのイラストアイデアは、お子さんとの関わりがよい影響を及ぼすこともあるとか…。興味深い話が盛りだくさん、ぜひご覧下さい!
あきらめきれなかった夢-現在のお仕事内容は具体的にどのようなものですか?
大きく分けて広告業と出版業の2つです。広告業はPRする為のもの、リーフレットやチラシ、ポスターでキャラクター制作やロゴ作りをします。 -では出版業はどのようなことをするんですか? こちらは雑誌のデザインですね。本のカバーデザイン、紙を選んだりする時もあります。イラストなしで、デザインだけをやる時もあるんです。-そうなんですか。素敵なお仕事ですね。
利根川さんがこの職に就いた理由は、やっぱり昔から絵が好きだったからですか?
-本当にそうですね。 でも大学4年の就職の時、もうこれ以上、自分に嘘はつけないと思って、親に黙って教員採用試験受けなかったんです・・・。-えっ!?
だってあきらめきれなかったから。それで広告代理店に面接を受けに行って、勝手に就職決めてしまいました。
-ご両親はなんておっしゃったんですか・・・? それはもうビックリしていましたよ(笑)。でも今までずっと「良い子」で我慢してきて、それがもう限界だったんですよ。ただ私、その世界のこと何も知らなくて、デザイナーになりたいのに面接時に自分の作品なんて持っていかず手ぶらで行ってしまって…。それなのに「デザイナーにしてください!」って面接で言ったり…。先方としては「なんだこいつ?」みたいな感じですよね。“いろは”の“い”の字も知りませんでした。でも、熱く話したら内定をもらいました(笑)。-そこでは何年働いたんですか?
5年半ですね。その時は5年半も働いたんだからフリーでもなんとかやっていけるだろうと思っていました。でも今思えばまだまだでしたね。―じゃあフリーになったのは結婚を期に、ですか?
いや、正確には結婚してからも働いていたんですけど、お互い夜11時過ぎに帰宅する生活で、気付いたら家の隅には大きなホコリのかたまりが…。仕事は辞めたくなかったんですけど、こんな状況じゃダメだよね…という感じで“仕方なく”辞めました。決して前向きな辞め方ではなかったですね。
―会社を辞めてフリーになられてから、すぐに仕事が入ってきたんですか? そうですね。勤めていた会社のデザイナーさんにとてもかわいがってもらっていて、そこから仕事を頂いていました。本当に感謝です。―そうですね、本当に感謝しなきゃ、ですね。
仕事の幅が広がった出会いでも子どもを産んでから、仕事の幅も変わったと思います。 -どんな風に変わってきたんですか?
近くにあるお母さんサークルに入ったんです。そしたらその中でどんどん人と繋がり、仕事が入るようになりました。そのサークルには北極しろくま堂の園田さんもいましたし。それがご縁で今、園田さんと一緒に仕事をしています。他にもそこにいた方の関係で、役所の仕事も入るようになりました。ユニバーサルデザインの仕事もそこつながりですね。-そもそも、そのサークルに入った理由はなんですか?
-でも突然我が家へ電話かけてこられて「○○雑誌に連載してますよね」って。はじめ「利根川」という名を聞いて、なんで連絡網が後ろから来るんだろうって思いました(笑)。
キャラクターの出来るまで-利根川さんには、しょくスポーツのキャラクターを作って頂き、その節は大変お世話になりました・・・。
大変でした(笑)。
-確かに…大変ですね。でも、お陰でとてもかわいく出来て嬉しいです。
あと、ショーくんとイクちゃんも最初はもっとスマートだったんですよね。
-私もこのキャラクターを作る時に『伝える』ことの難しさを実感しました。自分の考えを利根川さんに伝えたいんですけど、うまく伝わらない…。自分の頭の中にはイメージが出来ているんですけど、それを言葉にするのがすごく大変で・・・。
1ヶ月くらいかかりましたよね?
-かかりました。利根川さん、子連れで我が家まで来て下さいましたもんね(笑)。 私自身も「食育」ということを難しく考えていたんです。高学年を対象にしたキャラクターばかり考えてしまいましたし。「小さい子にも食育」って意識がなかったんです。今は打ち合わせでコミュニケーションをとれるようになり、先方から「イメージが違う」って言われることはありませんが、ニュートリオのキャラクターを考えていた当時は結構ありました。あの頃はまだ私も勉強中でしたし。その頃に比べると自分の手玉が増えたんだと思います。例えば「目がパッチリならこの目的にヒットする」とか。あとは地味系、ほんわか系のキャラクターの作り方などがわかるようになりましたし。今、あるビジネス雑誌でデザインの仕事をしているんですけど、そこで描いている絵がほんわか系なんです。ビジネス誌としてはめずらしいタッチですが、男性からよく「この絵が好き」って言われるんですよね。
-利根川さんご自身のように癒し系なんですね、きっと。
“だんだんと”お母さんに-当たり前ですけど、家庭と仕事の両立って大変ではないですか?
私って、だんだんお母さんになったんです。3年くらいかかったと思います。-どういうことですか?
27歳で結婚して、2年半後に子どもを産んだんですけど、ずっと人の目を気にしていて。「人の目が気になってきたからそろそろ結婚しようかな…。」「結婚して2年も経つし、人の目も気になるからそろそろ子どもを…」という具合に。そうやって周囲を見て物事を決めてきて、「母親」になりきれなかったんです。それがもう苦しくて苦しくて。だからお母さんサークルに入ったというのもあります。-そうだったんですか。そういう意味でも、サークルに入ってよかったんですね。 はい。でも最近は、本当に仕事がやりやすくなりました。子どもも大きくなってきましたし、送り迎えもないし。主人も家にいれば家事を協力してくれますしね。
-良いご主人ですね! でも主人がいないときはやっぱり大変!夕方は何よりのプレッシャーですね。フライパン振りながら子どもを怒鳴って(笑)、仕事の電話もかかってきますし。
-利根川さん、一日中仕事されてる感じですね。朝4時くらいまで仕事しているって前におっしゃっていましたし。 普通の会社員だったらまずいですけど、夜はなんだかノってきちゃうんですよね(笑)。幸せな気分になれるんです。私の仕事は家で出来るから、昼間時間をみて寝られますしね!
-では、土日はどんな感じで過ごしているんですか?
ここのところ仕事をしていますけど、基本的に土日の昼間はやらないですね。昼間は家族と過ごして夜9時から仕事を始めたりします。
『特売品』より『良い野菜』
-あ、それゲーム感覚でいいかも(笑)!
いつも120%の力で-でもアイデアがなくて描けないということはないんですか?
ありますよ。その時は放置しますね。でも、慣れましたから、締め切りの2日前にはアイデアが出ます。どうしても出ない時は誰かと話したり、本屋で一日立ちっぱなしで本棚を眺めたり本を読んだり。苦しい時もありますけど、でもどうにかして出しています。
-それにしても利根川さんって、いつも全力で仕事をしている印象を受けます。
はい。いつも120%の力を出します。相手にとっては80%かもしれませんけど、自分は120%もしくは150%出す気でいます。そうしないと次の仕事が来ませんし、自分に満足しないですから。
子どもから学ぶ想像力-今後の夢はなんですか?
私、デザインがヘタなんです。美大に行ってないから基礎を知らないですし、だから今独学で勉強しています。『デザインがうまくなりたい』、これが切実な夢です。あと私、本や雑誌が好きなんです。ページをめくって次々に現れるものが好き。だから本のデザインをもっとしたいと思っています。
-利根川さん、おばあちゃんになっても、ずーっと仕事してそうですね。 辞められないと思いますよ!保育園からやってきているんだから。墓石も彫りたいくらいです(笑)。-それいいかも(笑)!それにしても、思っていることが形になるって、素晴らしいことですよね。
はい。でも、子どもから多くを学ばせてもらっています。子どもの想像力はすごいですから、それを見ていると良い刺激になるんです。だから子どもを産んでから、より想像することが得意になりました。
-子どもって本当にすごいですよね。私たち大人にないものをたくさん持っていますし。
私には子どものような絵は描けないです。あの線は描けないですよ。
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