対談/vol.13
しょくスポ対談vol.13 三宅 郁美 さん今回のゲストは、料理家 三宅 郁美 先生です。三宅先生は、フランスで料理やお菓子づくりを学んだ後、ニューヨークで料理教室を開講。現在は東京・目白で料理教室を主宰する傍ら、料理本の出版やカルチャースクールの講師など多岐に渡ってご活躍されています。また、三宅先生の魅力は“料理のスペシャリスト”であることはもちろんのこと、品の良さとセンスの良さ、さらに気さくなところもステキです。先生が作るお料理には、そのお人柄の良さが“旨味”となって出ていました。
好きなことを仕事にする
-それが今のようなお仕事だったんですね。
「一番好きなこと」と考えたときに、『食』だったんです。食べることが好きだったので。私、お料理教室にはずっと通っていたんです。日本でも外国でも。主人の知り合いのご夫婦に中国人の方がいて、その方に中国料理を習ったりもしましたし、パリでもフランス料理を習いました。
-様々なお料理を学ばれたんですね。
それで帰国があと1年以内になりそう、となった時、「食の仕事を日本でしたい」と思ったんです。でも「私は料理上手ですからいらしてください」だけでは仕事ができないと思ったんです。そこで、ちゃんと勉強した“証”があったほうが良いと思い、コルドンブルーやリッツといったが学校に行きました。これが私のターニングポイントですね。
-先のことを考えて行動されたんですね。
考えざるを得なかったんでしょうね。“証”はなくても良いと思いますが、自分はそれがないと動けなかったんです。自分を奮い立たせるというか。何かを始めるとき、“0”から“1歩”ってすごくパワーがいりますから。
“先生になるため”の練習結局、パリから日本に帰国するはずが、そのままニューヨーク転勤になったんですけど、でもそれが運が良かったと思っています。 -どんな風にですか?
『ニューヨーク読売』という、主に日本人が読んでいる新聞があるんですけど、そこに勤めている友人がいて、ある時、地域広告スペースが空いてしまったらしく、その方が「広告載せてあげるよ」と声をかけて下さったんです。だから「お料理教えます」というような記事を載せて頂いたら、あっという間に100人集まりました。-すばらしい!
-ということは、皆さん通い始めて長いのですか?
長いです。12年以上の方が53人います。
-え!本当ですか?
ニューヨーク時代含め17年お教室をやっているんですけど、その中には15、6年の人もいますよ。生徒の半分弱が12年以上ですね。
-すごい!みなさん、きっと先生のファンなんですね。
ですから、体力的に辛いので辞めたいなと弱気な時もあるのですが、この方々とのご縁は大切なので自分の勝手では辞められない。お教室は月1回ですけど、皆さん楽しんで来て下さっていますし。きっと生活サイクルの一部になっていらっしゃるんだと思います。
新しいアイデアを生徒に
-そのようなアドバイスはうれしいですね。
…あまり努力と思わないタイプなのでわからないですが。でも体力的な努力はしているかもしれませんね(笑)。
先生は縁や運もありますが、きちんと努力をしてこのお仕事を拡大されてらっしゃいますね。 手を抜き、家族を幸せにするコツ-料理教室での指導などは、体力が必要になると思います。ご自身の食生活で配慮されていることはありますか?
そうですね、家庭では野菜は多く食べます。できれば無農薬や有機が良いですが、神経質なタイプではないです。あと、昔からお魚は大好きです。子供もいないのでお肉より圧倒的にお魚が多いですね。でもそれはお魚が好きだからであって、ストイックにはならないです。そうなるとストレスになるので。だから万遍なくですね。あとは料理の品数は多いと思います。高価なものでなくサッと作れるものが食卓に多く並びます。それは主にお野菜ですね。-きっとテーブルの彩りもキレイなんでしょうね。
あと、うちの教室のレシピって6人分なんです。
-それは珍しいですね。
そうなんです。なぜかと言うと、6人分だと2人家族の方は3回食べられるし、パーティーにも使える。4人のご家族方は、お子さんいると6人分食べちゃう。我が家でも1回に6人分作るんです。それを3つに分けて、その日に食べる2人分。あと2人分は冷蔵。最後の2人分は冷凍。でも決して同じようには出さず、少しだけ手を加えます。食べる方が同じものを食べているとわからないように。
-それは大切な心がけですよね。
1回に6人分作るとかなり時間を材料も省けるんです。たとえばハンバーグなら、2人分も6人分も道具の汚れ方は一緒なので、それを3つに分けたほうが楽なので。私はいかにサボろうかと心がけますね。
-私もそう思います。
ちょっとだけ手を抜いて家族を幸せにする。買ってきたハンバーグやから揚げをそのまま出すのは問題ですが、それに手間をかければそれでいいんだと思います。お料理の先生がこんなことをいうのは何ですが。でもそれがコツなんだと思います。
-多分そういうコツを教えてもらえると、作ってみようと思えるんですよね。
初出版の喜び-先生にとって、今まで一番嬉しかったことや、思い出に残っているお仕事ってなんですか?
そうですね…こばた先生は、ご自分の本はございます?出されたのは、お仕事なさって何年目ですか?
-それはいつですか?
2年前ですね。それからはお話を多く頂くようになったんです。この5月に出した「キッシュ&タルト」という本が3ヶ月で6刷終わったんですね。
-すごいですね!
ありがとうございます。でも、それはとても嬉しかったです。 あと、嬉しいことと言えば…お子さんに教えているときがすごく楽しく嬉しいですね。小学校入学前位から小学校低学年のお子さんを教えるんですけど、小学校1~2年生くらいまではみんな個性が違って面白いんです。クッキーの丸め方を教えても全員違いますし。自分のやりたいことが小さいながらにあるんですよね。料理手順も、こちらとしては最高の手順を教えているのに、違う手順でやってしまったり。でも出来たりするんです。「こんな風にもできるのね」と、5歳の子に教わったりしています。
-子どもは私たち大人が持っていない、あるいは忘れかけていた発想をたくさん持っていますよね。
そう。全員個性があって、全員天使で悪魔で、全員すごい才能があるんです。1段1段ていねいに-先生が仕事を極められる、夢を達成してきてらっしゃるコツは何でしょうか?
去年よりも必ず1段ずつ上がることでしょうか。
-なるほど。
素敵な方とお会いすると、必ず主人や友人に会わせたいと思います。でもそれは何かを得たい為ではなく、「この二人を会わせると、きっと楽しくて幸せ」と思ってこれまで生きてきたんです。そうしたらそれが自分に返ってきた、それですね。あ、そうか、今話していて初めて自分がそうやってきたんだと気づきました。外国人のパーティーってそうなんですが、おもてなしをする上で美味しいご馳走はいらないんです。外国の方って、お料理が出来ない方でも必ずホームパーティーをしますし。買ってきたパテとかでも全然問題ないんです。要は『誰かと誰かを引き合わせるパーティー』。楽しくなる人たちを会わせるパーティーです。それは外国生活10年で一番学びました。
-やっぱりそうだったんですね。初めて三宅先生とお会いしたとき、人が寄ってくる雰囲気があったんです。
人間が好きなんです。1人でいるより大勢でいたいんです。
-私もすごく人に縁があり、自分の実力以上のことをやらせていただく機会も多かったんですけど、それって本当に恵まれていると思っています。機会を与えて下さった方に失礼にならないよう全力でお応えしていきたいですね。
いつか、映像付きの本を
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