対談/vol.2
しょくスポ対談vol.2 小出 宗昭 さん今回のゲストは、現在弊社事務所が入っている施設『SOHOしずおか』インキュベーションマネージャー、小出宗昭さんです。2003年の『スポーツ弁当プロジェクト』では、共に走り成功へと導いてくださった、とても“熱い”方です。これまで多くの方を支えてきた中で感じた、仕事に対する考えや信念、想いについて伺いしました。どんな“熱い”メッセージが飛び出すか・・・。どうぞお楽しみ下さい!
SOHOしずおかスタートときっかけ−まず、SOHO静岡のはじまりを教えてください。 SOHOしずおかは2001年2月1日、静岡県が施設整備をした創業支援施設です。13の部屋に起業家の方を迎え入れ育成支援をするというのがそもそもの目標。運営の責任をおっている静岡市を中心に行政に近い団体がいくつか集まり、協議会を作って運営しています。その静岡市が、私の属する静岡銀行に対し常駐マネージャーを派遣して欲しいとオファーを出したんです。 −なるほど。
しかし静岡市は、その人材に関してある条件をつけたんです。 −条件?それはどんな条件ですか?
「やばい、やばい、やばい・・・・」決して前向きには捉えてはいなかった−今でこそ全国から注目され、全国からいろいろな方が訪ねてこられますが、最初からそんな施設ではなかったですよね?
まったくです!本当にただの『箱』でしたから。
−じゃあ、こちらに来ることが決まった瞬間の本音は・・・?
ニーズはどこにあるのか、的確に捉えて方向性を決める−でもそんな状況で、どのように進めていったんですか?入居者との交流や、あと今は月間100名ほどSOHOしずおかに来ていますが、その方々をどのように巻き込んでいったのか、呼び込む手段等は?
マニュアルはない、ロールモデルもない。更に「好きにやってください」って言われたんです。そこで「前例はどうであれ、こういう施設は本来どうあるべきか」と考えました。また、当時入居している人達が何を希望しているのか、ニーズはどこにあるのかを探したんです。方向性を決めるためにね。そこで入居者に意見を聞いたところ、共通していたのが「人の流れやネットワークが欲しい」ということでした。「それじゃあ、それをここのロビーに作ろう」と。
−なぜですか?
SOHOしずおかの常駐職員は僕だけ。あとは4人の派遣社員。オリジナルの制度もない。人も制度もお金も無くて何ができるの?ってね。でも、勝算はあると思っていたんです。 −すごい自信ですね、その根拠は?
銀行員生活18年の中で地域産業の人を見ていて、経営の悩みや課題を抱えていないところは100%ないと分かっていたから。 ところがご質問の通り、世の中そんなうまい話はなくて(笑)。「さぁ、来てください」と言ったところで来るわけがない。『SOHOしずおか』なんて名前もへんてこりんだし、ましてや当時なんて知名度ないし・・・。
−その突破口は?
それは、今でも毎月行っている『ブレークスルーセミナー』。講演会と交流会がセットになっているものを開催したんです。首都圏にはあるのですが、地方都市では起業家や既存の企業の方が一同に介する異業者交流の場は殆どないのです。だからそのような異業者交流の場を構築し、毎月継続実施して人の流れを作る、そして短期的にSOHOしずおかの知名度を上げていこうと思ったんです。 またネットワークを拡大するために。あと、静岡は基本的にすごくおとなしい街だから、そういう活性化したフィールドを作るだけではなく、活性した状況を維持し続ける必要があると考えたのです。 しかし、そうは言っても様々な講演がある中で、人を集めるためにはかなりインパクトある講師を呼ばなければいけない。講師選びには今でもかなりの工夫をしています。知名度が高く、かつ我々が伝えたい強いメッセージを持っている人たち、強い起業家精神を持っている人たちを呼び込ぶために。
−300本ですか!?
手を抜いた瞬間にSOHOしずおかの崩壊がはじまる位の危機感を持ってやっていますから。だから妥協しない。スポーツ選手が地道に筋トレするような勢いでね。
小さなイノベーションは誰にでも起こせる
全てが『スポーツ弁当』から変わった−私がお会いしたのは2003年ですけど、小出さんはその時からすごく進化されていきましたよね。
そうですね、全ての部分がこばたさんとやった『スポーツ弁当』のプロジェクトから変化したかな。全国区になったのもあのお陰だし。自分たちの自信にも繋がったな。
−ところで私が小出さんと初めてお会いしたのは、先ほどお話に出た夜のセミナーではなく、昼間開催されていたカルチャーセミナーでしたよね。
そうですね。2002年の12月から半年ぐらいやっていたかな。あれは、要は毎月やっているお堅いビジネスセミナーに来ない層にだって面白い人材がいる、という仮定だったんです。こばたさんが申込みの電話をくれた時「スポーツ栄養士」と言ったから強い興味を持った。電話の最後に「必ず僕に声をかけてね」と言ったよね(笑)?
−そうそう!言っていました!
今だってもっと余裕があればやりたいんだけど、幸いなことに今はSOHOしずおかの知名度があがったので、何かやりたいと思っている人はこちらからアクションを起こさなくても来てくれるようになったんです。ただしこれは我々が常に前向きに情報発信しなければ来てくれないんですよ。手を抜いた瞬間に魅力がなくなってしまうんです。
モチベーションが落ちた時、このプロジェクトが終わる−でも、自分自身のコンディショニングの問題や、精神的に辛いこととか、本当はやらなきゃいけない時にやりたくない時もあると思いますが、そんな時はどうなさっているんですか?
ありますよ!でもSOHOしずおかは来た人のモチベーションを引っ張り上げなきゃいけない所。それには自分のモチベーションを高く維持し続けていないと出来ないんです。実は初期の段階で「自分のモチベーションが落ちた瞬間にこのプロジェクト終わるな」と気付きました。だから落ちている時には無理やりにでも引き上げます。
−どうするんですか?
僕は単純な人間だから単純なことで引きあがるんです(笑)。例えば単純明快な映画やDVDをひたすら見る。「ダイハード」とかね。イヤな役ばかり回ってきてとんでもないトラブルばかり起こって文句言いつつミッション貫徹、みたいなやつ(笑)。
−いやぁ、良かったです、そういう部分を伺えて(笑) 銀行時代は事務が雑で有名でしたから。「小出君!少しは片付けたら!」みたいなことを新入社員のときから(笑)。変わらないですよ。
栄養士に限らず『既成概念を破る』ことが大切
−ではその“可能性やチャンス”を見つけるためには何を心がければいいのでしょうか?
『既成概念を破る』かな。スポーツ弁当って、食品業界全般にあった既成概念を壊したじゃないですか。あるいは管理栄養士さんたちの動き方の中で、積極的に企業と関り商品開発まで提案してPRをし、というようなリードしてしまう姿も。それを破ったからこそ大きな成果に結びついているわけじゃないですか。みんな「そんなことできっこない」とか言ってすぐ自分で枠を作るんですが、その瞬間に可能性の芽を摘んでしまっているんです。やってみなきゃわかんないんですよ。果敢に枠を取っ払うようなチャレンジをするからうまくいくんです。これは栄養士さんの世界に限らないと思います。
守りに入らない理由−同感ですね。ただ、人は栄冠をつかんだ瞬間から守りに入りがちだと思うんです。でも小出さんはそうじゃない。ジャパンベンチャーアワード※1を受賞されて絶好調なのに、小出さんが守りに入らない理由は?
手を抜いた瞬間に崩壊が始まると先ほど言いましたが、このような姿勢であれば、維持継続できると思うんですよ。それは守りではなくて攻めですよね。あと、僕たちは過剰に期待されている一方、地域活性のロールモデルとしても期待されていますよね。それには勝たなくちゃいけないと思っています。それこそ「絶対負けられない試合がここにある」って意識。
「静岡のことを宣伝してくれてありがとう」
−ありがとうございます。光栄です。
結果的にSOHOしずおかが大きく転換できた出来事だから、紛れもなく一番印象深いです。あれ(スポーツ弁当)がなかったらSOHOしずおかは違ったものになっていたでしょう。しかも必然性がある偶然がたくさんあったし!すごく感謝しています。もう一度やれといわれると、たぶん出来ないと思うけど(笑)。
−タイミング的にも条件が全て揃っていたんですよね。国体という大きなイベントが来る時期にも乗りましたし。 国体なんて、60年に1回くらいしかこないしね(笑)!そういう面で全ての要素が揃っていましたよね。結果的に売れるにしたって、10日間で3万食売れるイベントなんて来ないもの。
−そうですよね。
うん、すごく手ごたえがあった。とても鮮明に覚えています。
今は『家族』という土台の上に乗っかっています−小出さんは、朝早くから夜遅くまで働いていらっしゃりますが、体調管理で心がけていること、例えば食事の面とか、休養、運動の面についてお聞かせ下さい。
お昼はいつも買ってくるのですが、必ずサラダを買うようにしています。これは相当意識しています。
−素晴らしい!では、朝と夜は? 自宅で出されるものを食べます。夜は帰ってからだから22時くらいかな。
−お食事は一人でするんですか?
朝は娘と。あ、息子は眠い顔して横に座っていますね(笑)。だから正確には3人、だから『孤食』ではないです。夜は食べていると回りに人はいます。妻だったり子ども達だったり。家にいる時間は短いですから、いるうちはコミュニケーションをとります。向こうがうるさいなってくらいしゃべっているケースが多いかな(笑)。
−運動はしていますか?
はい。この仕事はシャープ感がないといけないと思っていますから。毎朝腹筋50回、腕立て100回。休むのは日曜日だけ。
−あれ?以前娘さんと走っていませんでしたか? はい。娘が新体操をやっていた頃は走っていました。今は辞めてしまったので、それをいいことに僕も辞めちゃいました(笑)。本当は走った方がいいんですがね・・・。
−いろんな方たちとの出会いで変化した部分もありますけど、でも土台となっている安定したご家庭があって、食事も作っていただいて、家族団欒の時間もあって、そういう部分があるのも大事なんじゃないかなと思います。
これは比較できないし、僕にとってはこれが当たり前になっているから分からないけど、仮に独り身だったら、その中でどこまで出来るかはわからないですね。
−精神的に安定しているんですね。
子ども達や妻はいろんな媒体を通じて僕がやっている事を知っていてくれます。彼ら自身が、特に子どもたちが誇りに思ってくれることが分かるから、僕にとってはすごく嬉しいしありがたい。今、僕を構成する中においては不可欠ですね。この土台の上に乗っかっていますから。
周囲にとってプラスになるような存在に−最後に、今後起業したいという方や、挑戦しようと思っていない方に対してのメッセージをお願いします。
僕の仕事は起業家をたくさん輩出することがミッションと見えるけど、起業する事が絶対的な価値観とは思わないんです。それより「どういう想いで仕事をするのか」ってことが重要。社会起業家・ソーシャルアントレプレナーの考え方がありますがそれが重要で、職場でただ漫然と仕事をするのではなく、小さなイノベーションは日々起こすことが出来ると認識し取り組む。そのような想いで働いていると、仕事は自分の為だけではなく、周囲や地域社会にとってプラスになるような存在になり、良い働きに繋がるんじゃないかな。
−気付きは最終的には自分で感じるしかないんですよね。 押し付けられて気付くものではないしね。僕たちはお手伝いは出来てもそれ以上はできないから。
−最近気付いたんですけど、自信と言うのは自分を信じる力なんですよね。
そうだと思います。でも自分の実績については素直に自分自身で認めてあげる必要があると思います。スポーツ選手でも、記録を出しているのに自信を持てない人っているじゃないですか。客観的に自分を褒めてあげるのが必要ですよ。
チャレンジの先の楽しみを待っていたい−最後に、小出さんの今後の夢は?
それがわかんないんですよ。人に対してはいろいろ言っているんですけど(笑)。ただ、チャンスをみんながくれるから、それに対して一つ一つチャレンジしていきたい。その結果を出した後、何が来るのか楽しみに待っていたい。ちょっと無責任かな?
−今日のお話、とても参考になりました。小出さん、ありがとうございました。
※1:Japan Venture Award・・・創業・ベンチャー国民フォーラム主催、創業やベンチャーにおける次代のロールモデルを提示することを目的とし、
新たなビジネスに向かって果敢に挑戦を続け、成功された起業家、起業支援家、また、地域の特色を活かした創業 事例や地域に貢献している事業等を地域貢献賞として表彰する。小出氏は起業家の創出と地域活性化に向けた 支援活動が高い評価を受け受賞。
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