対談/vol.10
しょくスポ対談vol.10 井村 穣 さんvol.10のゲストは、スコーンが大人気のパン屋「キィニョン」を経営している井村穣さんです。国分寺や立川を中心に<地域に根ざしたパン屋>を目指している井村さん。“元サラリーマン”の知識、経験を活かし、魅力溢れる店舗作りを日々実践しています。そんな井村さんにサラリーマン時代のこと、パン屋「キィニョン」のこと、そして地域との関わりについて伺いました。
パン屋「キィニョン」-井村さんの現在の仕事内容を教えてください。
東京の国分寺と立川で「キィニョン」というパン屋を経営しています。具体的な仕事は、もちろん経営全般ですが、まだまだ小さな会社なので総務・人事・経理などの事務全般と外部への営業、各店の品揃えや販促の計画などは私が担当です。お店で販売することもあるので、パンの製造以外のすべてが仕事の範囲になっているという感じです。-私も先日お店に伺いましたが、とてもかわいらしいお店ですよね。
ありがとうございます。キィニョンのキャラクターやお店の雰囲気が女性のお客様に気に入っていただいているようです。お店や販促物などのデザインは、社員の女性スタッフとアルバイトの美大生がアイディアを出し合って作っているんです。-「女性目線」のデザインなのですね。お店の人気商品はなんですか?
-百貨店での催事も行っているそうですが、どのくらいの頻度で行っているのですか?
月によって違いますが、今年になってからはかなり入っていて、月の半分から2/3くらいでしょうか。-そんなに!大人気ですね。それは関東近辺だけですか?
去年の秋くらいまでは多摩地区だけで出店していたのですが、ありがたいことにスコーンの評判が良くて、都心のお店からも声がかかるようになって、年末からは銀座や渋谷のお店でも行うようになりました。多くの方にキィニョンのことを知ってもらう機会ができてありがたいですね。
-HPではネット販売もしているとのことですが。
はい、昨年から本格的なショッピングサイトをオープンしました。都心で百貨店催事をやるとアクセス数も増えてネット販売の売上が増えるようで、催事はいいプロモーションの場なんだなーと思っています。-他にはどのような事業をやっているのですか?
地元の保育園やレストランなどにパンを卸したり、ショッピングカタログにも商品を提供しています。昨年からそういった卸の仕事も入れるようにしています。
NPOがなぜかパン屋に-でもなぜパン屋になったのですか?当初はサラリーマンだったと伺ったのですが?
もともと百貨店に16年勤めていたんです。会社では、売場での販売をはじめ社員教育や福利厚生関係などの仕事をやらしてもらいましたが、最後の6年間は会社から離れて労働組合の専従役員までやりました。-いろいろ経験されたのですね。
-そうですよね。まちを作っているのはそこに住む「自分たち」市民ですからね。
私たちは、自分たち大型小売店や労働組合だけでなく、まちを構成するいろんな人たち、NPO、大学、商店街、商工会などと連携して何が出来るか探っていきました。実際に各地でアクションを起こしてもらうには、事例をつくって発信していくのが一番効果があるだろうということで、いくつかのまちで地元のNPOなどと連携してイベントを開催するなどの取り組みもしていきました。そういうことをやっているうちに、NPOやコミュニティビジネスとか地域に密着して働いている人たちの生き方にとても興味を持ったんです。これからコミュニティービジネス、ソーシャルビジネスのニーズはどんどん高まっていくんだと確信するようになりましたし、自分自身もこういう働き方をしていきたいとも思うようになっていきました。-少しずつ独立心が芽生えてきたのですね。
ちょうどその頃、いま住んでいる小金井市に引っ越したばかりだったんですが、自分の住んでいるところでも何かまちづくりに関われないかと思い、市主催のイベントや講座などに参加してたんです。そんな時、市役所の方から「コミュニティビジネスの中間支援組織を作りたいが、公設でつくる予定はなく、支援するから市民の有志で作らないか」というお話がありました。それで何人か有志が集まり、コミュニティービジネス起業のサポートをするNPO法人を立ち上げることになったんです。組織の立ち上げに向けて議論をする中での最大の課題が、誰がこの組織を担っていくのかということだったんですが、ちょうどその頃、出向先の上部団体から元の労組に戻ることになっていて、会社を辞めるならこのタイミングを逃しちゃいけないと思い会社を退職、そして半年後にその中間支援NPOを立ち上げたというわけです。
-まだそんなに経っていないのですね!もうずっと「キニョン」に関わっているのだと思っていました。
もともとNPOをやって社会起業家になりたかったのに、なぜかパン屋になってしまったという感じです(笑)。
-でも、経験したことが全て糧になっていますよね。百貨店での組合のお仕事とか、NPOでの経験だったり。ムダは何一つないですね。
その通りだと思います。これまでの仕事で得た知識や人脈のすべてがホントに役に立ってますね。
持続可能な働き方を-井村さんが大切にしていることや、仕事の原動力ってなんですか?
パン屋の業界は、一部の大手以外は一般的にあまり労働条件が良くないようなんです。職人さんはみんな丁稚(でっち)奉公みたいな感覚で働いているようで、低賃金で長時間労働を受け入れている。最近のとくにブーランジュリと名乗っているようなパン屋さんってなんだか華やかな感じですが、実際に働いている人は結構大変なんです。職人さんは離職率も高いですし。僕はそこを何とかしていきたいと思っています。多くの方が定年まで働くことができるパン屋を目指しています。従業員の労働環境をよくしていくにはどんな仕組みでやっていこうか具体的に検討していくのが楽しいんです。それが仕事への原動力ですかね。
-まさに「WINWIN」ですね。
そうなんです。こういったことがもっともっと出来るようになるためにも、早期に経営を立て直して会社がしっかりしなければいけないと思いますね。持続可能なビジネスモデルを作っていきたいですね。
野菜中心のご飯-井村さんご自身の食生活はどんな感じですか?
パンばっかり食べています。-やっぱり(笑)
自分のお店のパンはもちろん、勉強の為に他のお店のものも。でも基本的にはサラリーマン時代から、それなりに食べ物にはこだわっていました。健康志向で、社員食堂などでもサラダは必ずとっていましたし。今、妻が作る家のご飯も野菜中心ですしね。-運動はいかがですか?
やらないですね。せいぜい自転車に乗るぐらいでしょうか?でもただの“移動手段”なので、運動しようと思って乗っている訳ではないのですが。自転車は便利だし、ちょっとかっこいいし、だから車に乗るのをやめて自転車にしました。自宅から立川、あるいは吉祥寺くらいまでは自転車で移動します。
-え~!すごいです!単なる移動手段を超えた距離ですよ!
でも、まだまだ足りないと思います。サラリーマン時代にはちゃんとジムに行ってエアロビなんかもやってたんですよ。
-的確な判断ができるのは、健康な体があってこそだと思います。食生活も考えていらっしゃるし、移動手段として、かなりの距離を自転車で移動していらしてすごいと思います。
地域に根ざしたパン屋
-聞いていてなんだかこっちがワクワクします。
普通の“おいしいだけのパン屋”だと、この先厳しいと思うんです。でも、そういったことをやることで生き残れるんじゃないかと。しかも働く方も誇りが持てて、地域の中でも役に立てば、それが最高じゃないですか。そんなイメージです。-そうですね。でも、井村さんなら実現すると思います。着実にやってらっしゃるので。
ありがとうございます。確かに、少しずつですが働く環境は良くなってきています。これから頑張っていかなければ、ですね。-応援しています。本日はありがとうございました。
井村穣さんのお店、キィニョンではネット販売を行っています。詳しくは、キィニョンHPで! キィニョンHP
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