対談/vol.14
しょくスポ対談vol.14 上田 昇 さん今回のゲストは元ライダーで、現在は「TEAM NOBBY」での若手ライダー育成などを行っている、上田昇さんです。
才能のあるライダーのために
ただ、高校生ではバイクに乗れなかったため、自転車を使ってバイクさながらの練習をやっていました。その頃はよくズボンの膝に穴が開いてました(笑)。 そして21歳の時にレースを始めました。1991~2002年までの12シーズン、ロードレース世界選手権(WGP)で走っていて、最高成績は世界ランキング2位を2回マークしました。 -世界ランキング2位なんてすばらしいですね!私はあまりオートバイには詳しい方ではないですが、とてもすごいことだと思います! まあまあすごいことですね(笑)-まあまあどころではないですよ! 直接のきっかけは、鈴鹿レーシングスクールジュニアの講師を担当していたとき、そこを卒業していったライダーを受け入れるチームがなかったのです。では、『TEAM NOBBY』を立ち上げることになった経緯を教えてください。 若くて将来性があり、そして才能のあるライダー達が走りたくても走る環境がないということは、私にとって許し難い現実でした。才能のあるライダーを強くして世界で戦わせたい、その思いから2007年に『TEAM NOBBY』を設立しました。ありがたいことに、多くの方の応援もあり、レーシングチームとして活動させていただいております。 -周囲のサポートがあってこそなんですね。
自分と戦う-上田さんがレースに出場していた時や、現在の活動の中で、嬉しかったことや印象に残っていることはありますか? 自分が現役の頃の嬉しかったことや印象に残っていることは、山ほどありすぎて絞り込むのは難しいですね(笑)。レースに勝った時はもちろんですが、自分の思い描いた走りができた時は、それは嬉しいものです。育成をするようになってからは、子供達が少しでもレベルが上がると嬉しくなってしまいます。子ども達は“のびしろ”だらけで、毎日進歩しています。ですから練習走行に行く度に何かしら嬉しいことが出てきます。 -それは嬉しいですね。
では、オートバイやレースの魅力ってどのようなところにありますか?
-そうですね、何事も最終的には自分自身との戦いだと私も思います。
スピード350キロの世界
-レースは、どのような形で進められるのですか?
私がやっていた世界グランプリレースは125ccクラスが100キロ、250ccクラスが105キロ、MotoGPクラスが110キロの距離を走り、速さを競います。これがいわゆるオートバイの『スプリントレース』といわれるものです。それとは別に、時間で決められているレースがあって、聞いたことがあるかもしれませんが、『鈴鹿8時間耐久レース』といった『耐久レース』に用いられるものです。例えばその鈴鹿だったら、8時間でより多くの周回をした人が勝ちになります。-そのような耐久レースにも出ることはあるんですか?
私は過去に1回だけ鈴鹿の8時間耐久レースに出場したことがあります。指導している子ども達が出ているのは、日本一を争う全日本ロードレースや、『レッドブルルーキーズカップ』という世界グランプリと併催で行われている試合(これはジュニアライダー(13~17歳の選手)のみで争われる)です。 世界大会に出場するために
実は日本でも年に1度『日本グランプリ』というものがあって、世界選手権の全18戦のうちの1つが日本で行われているんです。その大会では『ワイルドカード枠』といって、開催される国の選手たちに出場する権利(枠)が与えられます。僕はそのワイルドカード枠をゲットし、当時鈴鹿で行われた日本グランプリに出て、そこで優勝しました。そうして自分の力をアピールし、世界大会に出場することができたのです。 -そうだったんですね。
食事管理で競技レベルアップを目指す-上田さんは、『スポーツ時の食事』について自分が選手のときに意識はしてらっしゃいましたか?また今後についてはいかがですか。
自己流でスポーツトレーニングの本などを読んで勉強して実践していましたが、その道のプロフェッショナルである管理栄養士の方に指導してもらったことはなかったです。でも先日、こばたさんの講演会に参加させてもらい、そのおかげで自分の中での『食』に対する意識が高くなりました。-そう言っていただけると嬉しいです。
現役の時は、レースがある朝は食事がのどを通らなくて、ゼリー状のものを食べたりしていました。でも、もっとしっかり食事を管理すれば、競技レベルもさらに上がったと思います。
『こだわりを持つこと』と『あきらめの悪さ』-上田さんは世界で12年間も戦ってきましたが、世界で長年戦い続けられるというのはとてもスゴイことだと思うんです。その道を極めてきたからこそわかる大切なこと、教えてください。
やっぱり『こだわりを持つことだと』思います。アスリートとして本来あるべき姿というか、競技のために、時間も含めて、自分の全てをささげられるかどうか、ですね。自分の競技レベルに対してこだわって、現状に満足せずに常に上を目指すこと。そして『あきらめの悪さ』も大切です。それが必要なんじゃないかと思います。
-でも、自分がやるほうが楽ですよね。人を育てるのって、子育てと一緒で難しいですよね。
そうなんですよね(笑)。-実は先ほど、子ども達に声をかけて「やめたいと思ったことない?」と聞いたら「ない」とハッキリ言ったんです。そして、続けている理由を尋ねたら、「すごく楽しいから」と。「楽しい」と返答するということは、そういう環境を上田さんが作ってらっしゃるんだと思うんです。 いやいや、私がいなければもっと楽しいんだと思いますよ(笑)。でも私たちみたいな形でやっているチームは他にはないですね。レーシングチームで、子どもをお客さんとして走らせているところはありますが、うちはユースしかいないですし。 -上田さんは道がないところに道を作ろうとしていますので、険しい道、オフロードを走っているんだと思うんです。最初は道具も何も持っていないから手で掘って、そしたら石を見つけて、次は石でって・・・。だんだんやっているうちに賢くなっていくんです。そうしたら手を貸してくれる人が出てきたりして・・・。
そうですね。苦しいことは結構多いですけど、楽しいことが続いているからこのように出来ているんだと思います。
-これからも、子ども達の為、オートバイの未来の為に頑張ってください。私も応援しています。
|